アンダー・ユア・ベッド

アンダー・ユア・ベッド (角川ホラー文庫)

アンダー・ユア・ベッド (角川ホラー文庫)

 大石圭を広めてみようと画策してみます。
 この人の小説を単にダークだとか軽々しく扱えないのは常に陰鬱であり淫靡であるからでしょう。人間の抱え込む欲望をそのままに形にして吐き出した小説であるからして、綺麗事があるわけがありません。
 この小説は題名通り「あなたのベッドの下」が(一種の)テーマであり、DVと対比させた純愛小説でもあります。学生時代、たった一度だけ「彼女とのマンデリンを飲んだ思い出」だけを胸に日々を磨り減らすようにして生きていける青年。
 彼の彼女への思いがいかほどのものであるかが窺い知れると同時に人間の欲望の深淵に踏み込むような小説です。
 彼が純潔であり、純愛の持ち主である事は疑いようのない事実です。が、そこに表れる行動は奇異としか言い表せないものであるかもしれません。
 そこにはただ、奇妙な事実だけが横たわるとしても、彼の思いは清らかなものであると自分は思います。
 彼の心は折れてしまいそうな程弱いからこそ、かのように偶像を愛するのです。