「花まんま」の朱川湊人と書くと適切だろうか。直木賞作家が適切だろうか。賞をとっても、資格と同じで力量には関係しないので、こんな呼び方は嫌いだけど。
とすると自分なら「白い部屋で月の歌を」の朱川湊人、が適切かもしれない。
さて、今回の「水銀虫」は短編もの。元々短編志向の作家さんなので、どれも程よくまとまっている。「小説すばる」連載のものを加筆修正したもの。
どれもが底辺に流れる懐かしさを含みつつも「罪を犯したもの」に対する「恐怖」を題材にしており、辻褄があわないところがありつつも、ゾクリとする毒を含んでいると思う。
いつも雰囲気のある作家さんなので、読みやすくて良本。穢れを持つ人につきまとう罪に関わる恐怖、当然のことかもしれないが、現実ではそうはうまくはいかない。が、そうであってほしいと思わせるところがある。
過去の虐めに生々しさのある「薄氷の日(うすらいのひ)」、熱病に侵されたようになる少年たちを描く「微熱の日」を恐ろしく感じたかな。
「死」という言葉を弄ぶ「はだれの日」はあり得そうな気がしてしまう。この作品は「死」という言葉は甘美であるが所詮は他人事なので、軽々しく口にする人が絶えない理由を含んでいる。
「私はバカでぇす! 私はバカでぇす!」
ちょっと堪えた。
- 作者: 朱川湊人
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/09/26
- メディア: 単行本
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